司書が使う専門用語を解説します

司書が使う専門用語を解説します 図書館あるある
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図書館に限らずそれぞれの業界にはその業界だけの用語が存在します。ごく一般的なものもあれば、一般の方には通じない独特なものもあります。この記事では、司書が使う専門用語を五十音順に紹介します。

OPAC(おぱっく・おーぱっく)

館内にある資料を検索するシステムのことですが、検索システム専用のパソコンを指す使い方が多いようです。司書同士の会話ではOPAC(オパック)で通じますが、つい利用者に言ってしまっても通じません。あそこに置いてあるパソコンで検索できます、とご案内します。

オリコン

折りたたみできるプラスチックのケース(コンテナ)です。他の図書館に資料を送るときなどに使います。一般的には「オリコン」と言えば音楽ヒットランキングのことですが、図書館では折りたためるコンテナケースのことです。折れるコンテナでオリコン(折りコン)なのだと思います。個人的にはこの用語にはいまだに慣れません。

開架(かいか)

利用者が直接手に取れる方式のこと、またはその書棚のことです。一般的な図書館のイメージは、開架式の書棚がずらりと並んでいる状態だと思います。これに対して利用者が入れない方式・書棚を「閉架(へいか)」といいます。

貸出(かしだし)

利用者が資料を借りることです。司書のもっとも基本的な作業のひとつです。利用者によっては「かりだし」と発音する方もいらっしゃいます。意味はわかりますが、用語としては「かしだし」です。貸し出せる資料数(貸出冊数)、貸し出せる期間(貸出期間)は、段々と多く、長くなっているようです。

禁帯(きんたい)

「禁帯出(きんたいしゅつ)」の略です。貸出はできず、館内で利用することだけができる資料を指します。おもに辞書や辞典、白書などが対象です。禁帯の資料には「禁帯」と書かれたシールが貼ってあります。「館内」というシールの場合も同じ意味です。複数の蔵書がある場合、1冊だけが禁帯で、残りは貸出可の場合もあります。
なぜかエプロンに禁帯のマークを貼っている同僚がいます。本人に確かめたことはありませんが、お持ち帰りできないという意味だと解釈しています。

書庫(しょこ)

開架できないが、除籍するのはもったいない資料を保管してある倉庫です。一般に利用者は入れません。OPACで検索はできますので、この本はどこにあるのでしょう、と聞かれると書庫の場合が多くあります。鍵を取って書庫に走り、探し出して利用者に提供します。その際、他の司書に「書庫に行ってきます」と声掛けしておく方が無難です。書庫でも資料は整然と並んでいるはずですが、新人のうちはなかなか探し出せないこともあります。声掛けしておけば、あまり時間がかかりすぎると、応援がやってきますが、声掛けしていないと、書庫内で立ち往生してしまいます。

除籍(じょせき)

資料を廃棄することです。厳密には、資料を原簿から削除することで、廃棄だけでなく、リサイクルに回されたり、売却されたりすることもあります。書庫にも限界があります。収集した資料を永久に保存できるのは、国内では国会図書館だけでしょう。それ以外の図書館は、多かれ少なかれ除籍が発生します。

資料(しりょう)

図書館で扱っている本などの総称です。図書館で貸し出したり、読んだりできるのは本だけとは限りません。DVDやCDなどの視聴覚資料や郷土資料もありますので、それらをまとめて資料と表現しています。

請求記号(せいきゅうきごう)

資料の背中に貼っているラベルに書かれている数字(英字・記号・カタカナ)です。日本十進分類法(NDC)という規則に従って付けられています。「913」であれば日本文学、「201」であれば歴史学などとなっています。原則として図書館ではこの請求記号の順番に資料が並べられています。

選書(せんしょ)

図書館で購入する資料を選ぶことです。選ぶ対象は、新刊書、利用者からのリクエストが多いもの、図書館のある地域に関連したもの(著者や内容)などです。

相互(そうご)

自分の図書館にない資料を他の図書館から借りることです。相互貸借や図書館間相互貸借の略です。蔵書には限りがあります。自館にない資料がリクエストされたときは、同じ都道府県にある他の図書館から借りてきて貸出を行います。ときには、他の都道府県の図書館から借りることもあります。

団体貸出(だんたいかしだし)

図書館から資料を貸し出す場所はカウンターだけではありません。学校や幼稚園、地域のボランティア団体などにまとめて貸し出すこともあります。このような貸出方法を「団体貸出(だんたいかしだし)」といいます。
私が勤務している図書館では、小中学校の各クラスあてに、春と秋の2回、資料をオリコンに詰めて受け渡しています。団体貸出の時期になると、大量の資料が戻ってきてそれを整理し、詰めなおして別のクラスに送るという作業を毎年、繰り返しています。冊数を数え、傷んだものは修理に回し、古いものは新しいものと差し替えるといった作業が集中的に発生します。図書館員総出の恒例行事です。
戻ってきたオリコンには、お礼の紙が入っていることも多く、それを見るのがちょっとした息抜きになります。

配架(はいか)

返却されたり、新しく購入したりした資料を書棚に並べることです。司書のもっとも基本的な作業のひとつです。資料はほとんど請求記号の順に並んでいますが、当然、例外はあります。例外は、図書館の規模など、それぞれの図書館に固有の事情から発生していますので、館により異なります。ベテランの司書であっても、別の図書館に転職すると最初は結構苦労するようです。「排架」と表記することもあります。

パスファインダー

図書館にある資料(図書館外の場合も)の調べ方、探し方を説明した手引きです。たいていの場合、A4判の用紙1枚に書かれています。
取り上げるテーマは、図書館によってさまざまです。法律関連・統計関連のデータベースの使い方のような一般的なものから、地域の歴史・文化のようなその地域独自の視点のものまで、図書館の個性が表れます。各図書館の司書の腕の見せ所です。
ある程度以上の規模の図書館であれば、館内の見やすい場所に置いてあります。興味のあるテーマがあれば、ご自由にお持ちください。

ブックトラック

ブックトラック

資料を運ぶための台車です。おもに返却された資料を書棚に戻すときに使いますが、それ以外にも用途はさまざまです。予約の本が多くなったときの一時的な置き場所になることもあります。ごくまれに利用者さんから使わせてほしいと言われることもありますが、キリがなくなると困りますので、丁重にお断りします。

複本(ふくほん)

2冊以上ある同じ本です。利用者さんからのリクエストが多い資料は、1冊では足りず、複数購入することがあります。また、すでに所蔵している資料と同じものを寄贈された場合も複本になります。もちろん複本は多くはありません。

閉架(へいか)

利用者が書棚があるところに入れない方式のこと、またはその書棚のことです。これに対して利用者が直接手に取れる方式・書棚を「開架(かいか)」といいます。一般的な図書館のイメージは、開架式の書棚がずらりと並んでいる状態だと思いますが、これだけでは蔵書の収蔵量が限られます。閉架を活用することで、少しでも多くの資料を所蔵するようになっています。

別置(べっち)

原則として図書館の資料は請求記号順に並んでいますが、利用者が探しやすいように一定の種類の資料だけを分けて置いてあることです。文庫だけ、新書だけなどの形式的な分け方や、医療分野、ビジネス分野などの内容的な分け方があります。

返却(へんきゃく)

利用者が借りた資料を返すことです。司書のもっとも基本的な作業のひとつです。公共図書館では、図書館の内外に返却用の設備を設置して、図書館が閉まっていても返却できるようになっています。私が司書になってもっともびっくりしたことは、返却期限を守らない人がたくさんいるということです。

リサイクル

図書館で除籍した資料を利用者に無償で提供することです。もちろんあまり状態の悪いものは廃棄処分になりますが、まだ利用できるものは欲しい方にお譲りしています。
廃棄処分になり、利用者の方に自由に持って帰っていただける本を並べて「リサイクル本です。ご自由にお持ちください。お1人何冊までです。」と掲示してある様子をよく見ます。「リサイクル本」という表現が、この業界ですでに定着しているようです。「廃棄本」というよりソフトな感じがするからでしょう。しかし、私はこの用語に少し違和感があります。図書館側からすればリサイクルでしょうが、利用者側からみてリサイクルといえば、ペットボトルのように自分が今度はどこかに持っていかなければならないと思うような気がします。実際、リサイクル本を読み終わって、カウンターに返しに来る方がたまにいらっしゃいます。お返しに来られたら、そのまま受けとり、あらためてリサイクルコーナーに並べ直しています。文字通り、リサイクルです。

レファまたはリファ

「レファレンスサービス」あるいは「リファレンスサービス」の略で、司書が利用者の調べ物をサポートすることです。司書のもっとも基本的な作業のひとつです。大学図書館であれば別でしょうが、公共図書館では、実際にレファと呼べるほどの質問が来ることはまれです。それでも司書は常にレファの準備をしています。