「振り仮名」があれば、学力は上がるのか(松本大)ポプラ社

「振り仮名」があれば、学力は上がるのか おすすめの本
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書名:「振り仮名」があれば、学力は上がるのか
著者:松本大
出版社:ポプラ社
発売日:2065年6月22日

第1章 「振り仮名」「ルビ」とは何か
第2章 振り仮名があれば、学力は上がるのか
第3章 振り仮名がひらく日本語の未来

『「振り仮名」があれば、学力は上がるのか』という書名を見たとき、多くの人は「振り仮名を付ければ子どもは勉強しやすくなるのではないか」という素朴な疑問を思い浮かべるでしょう。しかし、本書は単純にその問いへ「はい」か「いいえ」で答える内容ではありません。著者の松本大氏は、教育現場での実践や研究成果をもとに、「読む力」と「学ぶ力」の本質を多角的に考察し、振り仮名の役割を丁寧に検証しています。

「振り仮名」の効果や限界を冷静に分析しています

本書で印象的なのは、振り仮名を「便利な補助」として肯定するだけでなく、その効果や限界を冷静に分析している点です。振り仮名は、漢字が読めない子どもにとって文章への抵抗感を減らし、内容理解を助ける大きな支えになります。一方で、振り仮名に頼り続けることで漢字そのものを覚える機会が減る可能性や、読解力の育成との関係についても触れられています。つまり、「振り仮名を付けるか、付けないか」という二者択一ではなく、子どもの発達段階や学習目的に応じて適切に活用することが重要であるという視点が貫かれています。

また、本書では学力とは単に漢字を読めることではなく、「文章を理解し、自分で考える力」であることが繰り返し示されています。漢字が読めないために文章の内容が理解できず、学習意欲を失ってしまう子どもがいる一方で、振り仮名によって内容を理解し、自信を取り戻す子どももいます。このような事例を通して、著者は学びの入り口を保障することの大切さを訴えています。教育では「できる子」に合わせるのではなく、一人ひとりが学びに参加できる環境を整えることが求められるというメッセージが伝わってきました。

一方で、本書は教育関係者だけに向けられた専門書ではありません。保護者や学生、さらには教育に関心をもつ一般の読者にも理解しやすい文章で書かれており、専門用語には丁寧な説明が添えられています。実際の教育現場で起こっている具体例が豊富に紹介されているため、「学力とは何か」「読むとはどういうことか」といったテーマを身近な問題として考えられる構成になっています。そのため、教育に詳しくない読者でも最後まで興味をもって読み進められるでしょう。

誤読を少なくできるのでは

本書を読んで私が特に考えさせられたのは、「振り仮名は単に読みやすくするためだけのものではなく、正しい言葉の読みを伝える役割も担っているのではないか」という点です。

例えば、私は「固執」という言葉は本来「こしゅう」と読むべきだと考えています。しかし、現在では「こしつ」という読み方も慣用読みとして辞書に掲載されるようになりました。言葉は時代とともに変化するものとはいえ、誤読が広く使われることで、それが新たな読み方として定着していく現象には複雑な思いがあります。もし書籍や教科書などで適切に振り仮名が付されていれば、このような誤読が広まることは少なくなるのではないでしょうか。

本書は、振り仮名の役割を「漢字が読めない子どもを助けるもの」としてだけではなく、「誰もが正確に情報を受け取り、学ぶ機会を保障するための工夫」として考える視点を与えてくれます。私はこの考えに大いに共感しました。振り仮名が普及すれば、学習につまずく子どもを支えるだけでなく、言葉本来の読みや意味を次の世代へ正確に伝えることにもつながるのではないかと思います。

タイトルは「振り仮名」という一つのテーマを掲げていますが、その本質は「誰もが学びやすい社会をどう実現するか」という教育全体への問いかけです。本書は、教育関係者だけでなく、日本語や言葉の変化に関心をもつ人にも多くの示唆を与えてくれる一冊でした。