「校内盗撮」(斉藤章佳)集英社

校内盗撮 おすすめの本
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書名:校内盗撮
著者:斉藤章佳
出版社:集英社(インターナショナル新書)
発売日:2026年8月12日

目次
第1章 学校での盗撮が急増している
第2章 盗撮する教師の歪んだ「自己正当化」
【対談1】中学受験塾元講師A 有名塾の教え子を盗撮した講師の「本音」
第3章 子どもが子どもを盗撮する理由
第4章 盗撮された子どもの絶望と深い傷
【対談2】永守すみれ(ネットパトロール団体代表)AIも悪用されるデジタル性暴力の恐怖
第5章 子どもを被害者にも加害者にもしない「包括的性教育」
【対談3】末冨芳(教育行政学者)学校が校内盗撮を防ぐための制度とは何か
第6章 なぜ盗撮した教師を「治療」するのか
第7章 もしも子どもが学校で盗撮したら

学校は、子どもたちが安心して学び、成長するための場所です。その空間で、子どもを守る立場にある大人が盗撮の加害者になるとしたら、私たちは何を信じ、どうすれば子どもたちを守れるのでしょうか。本書は、学校という身近な場所で起きている性暴力の実態を明らかにし、その背景にある加害者の心理や社会の問題に迫る一冊です。

加害者の本音が語られている

本書で特に興味を引かれたのは、「【対談1】中学受験塾元講師A 有名塾の教え子を盗撮した講師の『本音』」です。盗撮事件について報道される際、私たちが目にするのは、事件の概要や逮捕、処分といった結果が中心です。しかし、加害者がどのような考えで行為に及び、自分の行為をどう捉えていたのか、その内面に触れる機会は多くありません。その意味で、実際に事件を起こした人物の証言を通じて、加害者の認識や心理に迫ろうとする対談には、大きな意義があると感じます。

とりわけ、中学受験塾という、子どもたちの将来を左右するほどの影響力を持つ教育の場で起きた事件であることは、重く受け止める必要があります。保護者は、講師の知識や指導力を信頼し、大切な子どもを預けています。その信頼関係が悪用されたとき、被害は単にプライバシーを侵害されることにとどまりません。人を信じる気持ちや、安心して学べる環境そのものが損なわれる可能性があります。

加害者の証言を読む意義は、決してその人物に同情したり、行為を正当化したりすることではありません。むしろ、自分の行為をどのように認識し、どのような理屈で許容してしまうのかを知ることで、犯罪を個人の異常性だけに還元せず、その発生や継続を防ぐ手がかりを得ることにあるのではないでしょうか。加害者の語る「本音」は、必ずしも客観的な真実そのものではありません。自己弁護や責任の矮小化が含まれる可能性も考慮し、被害者の視点や第三者の検証と照らし合わせて読む姿勢が大切です。

盗撮を単なる個人の犯罪として片づけない

また、本書が扱う問題は、特定の教師や塾講師だけに限られません。スマートフォンやSNSの普及によって、盗撮画像の撮影、保存、共有が容易になり、子ども同士の加害や、画像が拡散し続ける危険も生まれています。個人の倫理観に頼るだけでは、こうした問題を防ぐことはできません。学校や塾が相談しやすい仕組みを整え、被害を訴えた子どもを守り、問題を隠蔽せずに対応する体制を築くことが求められます。

本書を通じて考えさせられるのは、盗撮を単なる個人の犯罪として片づけるのではなく、子どもの安全を支える仕組み全体の問題として捉える必要性です。加害者の心理を知ることは、被害者の苦しみを理解することと対立するものではありません。加害の実態を直視し、再発を防ぐためにこそ、双方の視点が必要なのです。

加害者の証言に耳を傾けることには、抵抗を覚える人もいるでしょう。しかし、目を背けたくなる現実を知ることなしに、有効な予防策を考えることもできません。子どもたちが安心して学べる環境を守るために、私たち大人は何を知り、何を変えるべきなのか。本書は、その問いを読者に突きつける一冊です。